執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
杏樹が好んで使っている美容室専売のアロマトリートメントは、ジャスミンが優しく香り、心が安らぐ。髪も艶々、手触りがちゅるんとしている。

「これ、すごくいい香りですね」

「気に入った? なら、ボトルをひとつ持って帰るといいわあ。哉明さんと一緒に楽しんで」

一緒にというのはまさか……。

いやいやと美都は心の中で否定する。それぞれお風呂に入って楽しんで、という意味だろう。

しかし杏樹は見透かすようにくすくす笑う。

「もしかして、哉明さんとお風呂、ご一緒したことないの?」

「す、するわけありません!」

「あら、そうなの? 美都ちゃんたら恥ずかしがり屋ねえ」

杏樹がくすくすと笑う。

ボディソープも同じメーカーのようで、今度は上品なローズの香りがした。

「か、体は自分で洗えるので大丈夫です」

「遠慮しないで。傷口に石鹸が触れたら痛いわよお?」

「大丈夫です、最近の絆創膏は高性能ですから」

背中だけ杏樹にお願いして、体を洗い流す。

一足先に洗い終わった美都は、乳白色のバスタブに浸かりながら、洗い場の杏樹を観察した。

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