執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「やっぱりそうなのね! あのバレッタを使ってくれたから、私、すごく嬉しかったの!」

「服は……雑誌を読んでみたのですが、なにがいいのかよくわからなくて」

「決まりだわ。週末はお買い物ね」

杏樹が顎に手を添えてキリリと答える。

これまでは買い物など面倒だと思っていた美都だったが、今日ばかりはぺこりと頭を下げた。

「よろしくお願いします」

「任せて。美都ちゃんにぴったりで、とってもかわいいお洋服を選んであげる」

「お手柔らかにお願いしますね?」

おっかなびっくりながらも、新たな一歩が踏み出せそうな気がした。



哉明が迎えに来てくれたのは、翌週の週末だった。

まだ事件がすべて片付いたわけではないが、家に帰れる程度には落ち着いたという。

土曜日の午後。車から降りた哉明は、玄関で待っていた美都を見て絶句した。

「その格好……」

秋を意識してワインレッドのブラウスに、チョコレートカラーの巻きスカート。肩にマスタードとブラウンのチェック柄のストールを巻いている。足元は上品なショートブーツを履いた。

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