執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
バッグはブランドもので杏樹からのプレゼントだ。可愛い中にも気品があって、美都も気に入っている。髪はアップにして、毛先を緩く巻いた。

「うちの美都ちゃん、とってもかわいくなったと思わない?」

杏樹が自信満々に哉明に勧める。

「ええ。いつにも増して素敵です」

哉明がふんわりと頬を緩めたのを見て、美都は安堵する。

「美都。婚約指輪とネックレスの調整がついたそうだ。このあと表参道に寄っていきたいんだが」

「はい、ぜひ」

美都が頷くと杏樹は「デートね! 美味しいものでも食べてくるといいわあ」と手を打ち合わせた。

「美都。元気でね。またいつでもおいで」

「お父さん、ありがとう。行ってきます」

両親に見送られ哉明の車に乗り込む。

このシチュエーションは二回目のはずなのに、今度は切ない気持ちが押し寄せてきた。哉明と入籍し、ともに生きていくと決めたからだろう。

これから美都が生活する家はここではない。望めばいつでも会えるけれど、どこか寂しさを感じる。

「そうだ、哉明さん」

哉明が運転席に乗り込む直前、杏樹が声をかけた。

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