執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「大丈夫ですっ、ご心配なく。お風呂はひとりで入れますからっ……!」

哉明はくつくつと笑いながらハンドルを握っている。

しばらくして車はジュエリーショップに到着した。ふたりが足を踏み入れた瞬間、スタッフがやってきて「ようこそお越しくださいました」と奥の個室へ案内してくれる。

「取り寄せにお時間をいただき恐れ入ります」

そうは言っても最速で手配してくれたのだろう、完成まで一カ月とかからなかった。スタッフは奥のケースからジュエリーを丁寧に運んできてくれる。

「こちらが婚約指輪とネックレスでございます」

忘れな草をモチーフにした愛らしいリングとネックレスが目の前に置かれる。

スタッフはリングを美都の左手の薬指にはめ、サイズを確認した。

「よくお似合いです。サイズもちょうどよろしいかと」

美都は自身の左手の薬指に輝くダイヤをじっと見つめる。

哉明と婚約した証――この愛らしい忘れな草は、ふたりが愛を育んだ軌跡のひとつでもある。

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