執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「たまたまったらたまたまです。私の方にやましい気持ちはありません」

「おいそれ、相手にはやましい気持ちがあるって認めたようなもんだよな?」

哉明は引き続きじっとりとした目で美都を観察している。

「本当に、たまたま手が触れただけです。大須賀さんと特別なことはなにもありませんでしたよ」

本当は告白されたけれど、それを哉明が知る必要はない。心の中でそう言い訳していると。

「お前、今、嘘をつかなかったか?」

「え?」

哉明を安心させるための嘘が裏目に出て、余計に不安をかきたててしまったみたいだ。

(顔色が読めるっていうのも、難儀だなあ)

仕方がないので、素直に言うしかないと腹を括る。

嫉妬を煽ってしまうかもしれないが、哉明に優しい嘘は通用しないのでやむを得ない。

「もしも婚約者を信用できなくなったら僕を頼ってほしい、と言っていましたね。あの頃からキャリア警察官に対して不信感を抱いていたようです」

「で。お前はなんて答えたんだ」

「丁重にお断りしましたよ。私は婚約者を信じていますって」

哉明はようやく納得したのか押し黙って、目の前のマルゲリータを頬張った。

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