執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「そうなのか? 俺はもともと、一対一の顔合わせだと聞いていたが」

(やっぱり……!)

嫌な予感が的中し、硬直する。

『一緒にお礼を伝えに行く』というのは美都を駆り出すための口実に過ぎず、やはりこれは縁談なのだ。

自分は今、この壮麗な男と結婚を前提に顔を突き合わせている。

意識が飛びそうになって目を閉じた。とはいえ、このまま現実から逃げているわけにもいかず、ゆっくりと目を開けて深呼吸する。

「なおのこと、わざわざご足労いただきありがとうございました」

硬直したまま、愛想のかけらもなく告げると、哉明は顎に手を添えて頷いた。

「聞いていた通りの人物だな。とにかく礼儀正しく真面目で信用に足る。基本的に無表情で愛想はないが、慣れるとかわいげがある、と」

「かわっ……」

杏樹が事前に吹き込んだのだろうか? 『かわいげがある』だなんて、親の欲目もいいところだ。

「誤情報です。義母がとんだ失礼を」

「ああ、いや。君のお義母さんに聞いたわけではないんだが」

ん?と美都は目を見開く。杏樹に聞いたのでなければ、誰に聞いたのだろう?

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