執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
帰宅した美都は、リビングのローテーブルの上に積み上がっている雑誌の束を目にして首を傾げた。

(哉明さんが雑誌を読んでいるところを、あまり見たことがないけれど……)

近づいていって、目を丸くする。

雑誌――と思っていたのは、結婚式場のパンフレットだった。

ソファに腰を下ろし、パラパラとめくって中を確認する。国内の大規模式場から海外挙式、ハネムーンまで。ウエディング関連プランがたくさん載っている。

「それ、取り寄せといたぞ。希望があったら言ってくれ」

哉明がキッチンでコーヒーメーカーを起動させながら雑に説明する。

こんなにたくさんの資料を取り寄せるのは大変だっただろうに、片手間のように言うところは哉明らしい。

「哉明さんはご希望ありますか?」

「一番楽そうなのはふたりきりの海外挙式だな。周りに気を使わなくて済むし、ハネムーンも満喫できる」

相変わらずの合理主義。だが海外で挙式とハネムーンが同時にできるなんて夢のようで憧れる。きっと杏樹も素敵!と目をハートにして言うだろう。

合理主義とロマンティストの意見が初めて合致した。

「美都は?」

「私もそれがいいです。……ああ、このグアムのチャペルなんて素敵ですね」

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