執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
上質な素材を使ったシンプルなドレス、フリルやレースをふんだんにあしらった愛らしいドレス、トレーンが驚くほど長いゴージャスなものまで。

(私ひとりでは決められそうにないな……)

哉明をじっと覗き込み様子をうかがう。

「……哉明さんは、どれがいいと思いますか?」

「こういうものこそ直感だぞ?」

「直感は全部素敵だと言っています……」

頭を抱えた美都に、哉明は口もとを綻ばせる。

「いくつかに絞って、あとは試着して決めたらいいんじゃないか? こういうときこそ、お義母さんに手伝ってもらうといい。試着に同伴してもらったらどうだ?」

「確かに……!」

ウエディングドレスの試着に付き合ってなんて頼んだら――杏樹は喜んで舞い上がるだろう。それもある種の親孝行かもしれない。

カタログをめくりながら、ああだこうだと意見を交わし、気がつけば二十二時を過ぎていた。

時計を見上げた哉明が「今日はそのくらいにしておこう」とカタログを閉じる。

「哉明さん、先にお風呂に入ってください」

コーヒーマグを片付けながら言うと、哉明は「なに言ってんだ?」といたずらな表情でにぃぃっと笑った。

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