執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「俺が吸血鬼なら、美都の血はさぞおいしいだろうな。俺にそういう趣味がないのが残念だ」

「そういうご趣味じゃなくてよかったです……! ほら、交代ですよ」

美都は立ち上がり、今度は哉明をチェアに座らせる。

「って、おい。俺が世話を焼かれてどうするんだ」

「見ての通り、もう手は治ってますから。ほら、前を向いてください」

少々乱暴に哉明の頭にシャワーをかけ、シャンプーを泡立てる。美都と違って髪が短いからすぐ流し終わって楽ちんだ。乾かすのも楽だろう。

(こんなに楽ならショートでもいいかも)

そんなことを考えながら、今度はジャスミンのトリートメントを手に載せる。

「俺はトリートメントなんていらないぞ?」

「義母が『一緒に楽しんで』と」

艶々になった哉明の髪を、ぬるめのお湯で丁寧に洗いながす。

「お義母さんが楽しめって言ったのは、たぶんこういうことだぞ?」

髪を洗い終えた哉明が急に立ち上がり、美都に体を寄せた。

「きゃっ」

「次は体だが。こんなタオルを巻いていてどうやって洗うつもりだ?」

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