執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「だが、おおむね記憶の通りの印象だ。あのときから変わっていなくて安心した」

「私を覚えているのですか?」

「忘れたとは言ってない」

すると、哉明は両手をグーにして耳の下に持っていった。

「確か私立の制服を着ていたな。髪をこうやってふたつ結びにしていた。受け答えも年の割にきちんとしていて、見るからに真面目そうな、育ちのいい女の子だった」

思わず恥ずかしくなって俯く。子どもの頃を引き合いに出されると、どうしてこんなにも照れくさいのだろうか。

「昔の話ですから」

ちらりと哉明を見上げると、彼は驚いたように目を瞬いて、グーをパーにして降参のポーズをした。

「悪い。子ども扱いしているわけじゃないんだ。ちゃんと女性だと思って見ているから、そんな怖い顔しないでくれ」

……睨んでいるように見えてしまったのだろうか。照れただけだったのだが。

そんなつもりがなかっただけに軽くショックだ。どうも表情筋の扱いが下手で困る。

「さっきの話の続きだが。君は警察官の伴侶としては申し分ないと聞いている。確かに仕事柄、パートナーには品行方正であってほしい」

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