執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
すっと血の気が引いた。もしかしたら、とても失礼な言い方だったかもしれない。

(そういう意味ではなくて……!)

心の中で大否定をするけれど、顔は固まったまま。周囲から冷静沈着と勘違いされる所以だ。

美都はくらくらしながら、ゆっくりと言葉を選ぶ。

「あなたを知った上で判断したいと思っています」

「なるほど。俺は君のお眼鏡にかなうか、試されているというわけか」

哉明がくすくすと笑う。

また墓穴を掘った。泣きそうだ。もちろん表面上はスンとしているが。

(この人こそ、あえて私が困るような受け取り方をしていない?)

とりあえず「とんでもございません」と否定して目を閉じる。ああ、いっそこのまま眠ってしまいたい。

すると「よし」という声が聞こえた。

驚いて目を開けると、彼の力強い眼差しがいっそう輝きを増していた。

「決めた。婚約しよう」

「は?」

(なんでそうなる?)

さすがにポーカーフェイスが崩れて眉間に皺が寄る。げんなりとした顔を見せてしまって申し訳ない限りだ。

「私の話を聞いていましたか? 決断できない、と」

「聞いていた。だから婚約と言ったんだ。結婚じゃない」

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