執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
ああ、婚約はまだ婚姻届にサインをする前だから――って、そういう問題ではないだろうと美都は天井を仰ぐ。

「屁理屈ではないでしょうか」

「俺が君のお眼鏡にかなうかどうか、婚約中に考えてほしいと言っているんだ」

「でしたら、友人付き合いでもいいのでは? なぜわざわざ婚約だなんて言い方を」

「その間に、君がほかの男に取られては困る。予約のようなものだ」

こんな女、誰も横取りしませんよ!と心の中で全力で叫びながら、ようやく来た紅茶を飲んで平静を保つ。

「……ですが、お眼鏡にかなわなかったらどうするんです? 警察官はおいそれと婚約破棄などできないでしょう?」

とにかく体裁を気にする職業だと聞いている。婚約と婚約破棄を繰り返していたら、それこそ出世に響くだろう。

しかし、彼はくすりと笑みを浮かべ、美都から渡された紙袋を持ち上げた。

「それを言うなら、俺はこの手土産をもらった時点で、君と結婚しなくちゃならない」

「……は?」

思わず素っ頓狂な声が漏れた。どんな理論だ、それは。

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