執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「知らないか? 警察官が他者から金品などの謝礼を受け取るのは禁止されている。君に結婚してもらえないと、俺は懲戒免職になってしまう」

「いや……それは職務中のお話ですよね?」

「公私関係なく、利害関係者からの贈賄は禁止だ。君のお祖父さんは高名な弁護士だそうだな。充分利害関係がある」

狡猾な笑みを浮かべる哉明を見て、美都は混乱する。

「待ってください。そのお礼は、獅子峰さんがまだ警察になる前の行為に対してですから」

「だが今は警察官だ。加えて俺は、今年新設された部隊の指揮官を任されていてな、注目されているんだ。よくスキャンダルを狙う記者に追いかけ回され困っている。今もどこかで俺たちにカメラを向けているかもしれない」

思わずきょろきょろと辺りを見回す。そんな美都を見て哉明はプッと噴き出した。

「まあ、冗談はさておき」

「冗談だったんですが」

「あながち冗談じゃないが、責任を取って結婚しろなんて無茶は言わないさ」

そう言って楽しそうに肩を震わせている。

「獅子峰さんって、意地悪ですね」

「おっと、失敗したな。減点か?」

「他人に点数をつける趣味などございません」

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