執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
ぷいっと目を背けると、哉明はなおさら興味深そうに美都を見つめた。顔を合わせたばかりのときと、美都を見る眼差しの質が違う。

明らかに興味を持っている――が、興味を持たれるようななにかをした覚えはない。

「それにもし、私があなたのお眼鏡にかなわなかったらどうするんです?」

逆に質問してみると、彼は「問題ない」とコーヒーを口に運んだ。

「もうすでにお眼鏡にかなってる」

「え」

「あとは君だけだ」

いつお眼鏡にかなったのだろう。ろくな会話もしていないのに。

「私のどこが……」

「それは言っちゃつまらないだろ」

「なんだか気持ち悪いので教えてください」

まるで結婚詐欺に遭っているかのような空寒さ。まあ、警察官である彼が詐欺などするわけはないのだけれど。

いっそう目つきが険しくなる美都をのんびりと眺めながら、哉明は悠然とコーヒーを飲み干す。

「強いて言えば、そういうところだよ」

(余計わからない……)

哉明はスタッフを呼び止め、会計を指示する。まだここに来て十五分しか経っていないのに、もう帰るのだろうか。

「場所を移そう。君のお眼鏡にかなうように」

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