執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
『そりゃあぴったりだ! 君ならいい警察官になれるよ。帝東大卒ならキャリア組だな。十年後は俺の上司になっているかもしれない』

美都は予期せず耳にした青年の情報を頭に刻み込んだ。

(シシミネ、カナメさん……)

まだ面と向かってお礼を言えていない。「ありがとう」と伝えなければ。

そうやってタイミングを見計らっているうちに、いつの間にか彼は帰ってしまっていて、お礼を言う機会を逃してしまった。



翌日、美都は昨日と同じ時間、同じ車両に乗り込んだ。車両の真ん中辺に進み、きょろきょろと周囲をうかがう。

(……いた!)

美都が乗り込んだ入口とは反対側、ドアの近くにある手すりのそばに哉明は立っていた。

パーカーの上にジャケットを重ね、ボトムスはストレートジーンズ。リュックを背負い、耳にかけるタイプのヘッドフォンをしている。典型的な大学生の格好だ。

美都からよく見える位置にいて、目線を向けると、彼もニッと口の端を上げて挨拶してくれた。

(見守っていてくれる……)

ふんわりと胸が温かくなり、同時に照れくさくなって俯いた。

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