執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「卒業おめでとう。高校は別のところに?」

「はい」

「そっか。じゃあ、今日で最後の通学になるんだな」

美都は大きく頷く。

質問はたくさんあるし、言いたいこともあるはずなのに、本人を目の前にすると口が縫い付けられたかのように開かなくなった。

なんとか「ありがとうございます」という言葉だけは絞り出す。

すると、哉明の大きな手が美都の頭の上に乗っかった。

「よく頑張ったな」

じーんと胸が痺れたような気がした。頑張っている自覚のないまま必死に日々を過ごしてきたから、言葉にされた瞬間、目頭が熱くなってきた。

泣き出すなんて恥ずかしい。しかも彼の前で泣くのは二回目だ。よほど泣き虫な子だと思われるだろう。

咄嗟に俯くと、彼の手が頭の上でぽんぽんと跳ねた。髪を乱さないように、美都が怯えないように、気を使ってくれているのだとわかる。

電車が次の駅に到着し、人が乗り込んでくる。乗客の波に押され、美都は哉明の胸もとに突っ伏した。

「大丈夫か?」

美都が押し潰されないよう、腕を回して庇ってくれる。

哉明に包み込まれている感覚。守られているんだ、美都は確かにそう思った。


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