執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない



***



「一カ月も見守ってくださり、本当にありがとうございました」

今、美都は哉明の車の中にいる。ホテルを出たあと、場所を変えようと言われ彼の車に乗せられたのだ。

「そんな大げさなことはしていない。俺はただ、毎日同じ車両に乗っていただけだ」

ポリシーなのか意地なのか、どうしても〝助けた〟とは認めたくないらしい。

「当時、大学生でしたよね? 本当は毎日同じ電車じゃなくてもよかったんじゃないですか?」

大学の通学時間は授業によって変わる。毎日規則正しく電車に乗る必要はなかったはずだ。

「その通学時間がルーティンだったってだけだ」

「そもそも大学って、三月は春休みですよね?」

とうとう彼が反論をやめて押し黙った。

哉明は講義もないのに、毎朝早い時間に同じ電車に乗っていてくれたわけだ。これが親切じゃなくてなんだというのか。

「……ありがとうございました」

あらためてお礼を言うと、ようやく観念したようで「ああ」と謝辞を受け取ってくれた。

「ところで、どこへ向かっているんですか?」

「俺の家」

「……は?」

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