執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
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「一カ月も見守ってくださり、本当にありがとうございました」
今、美都は哉明の車の中にいる。ホテルを出たあと、場所を変えようと言われ彼の車に乗せられたのだ。
「そんな大げさなことはしていない。俺はただ、毎日同じ車両に乗っていただけだ」
ポリシーなのか意地なのか、どうしても〝助けた〟とは認めたくないらしい。
「当時、大学生でしたよね? 本当は毎日同じ電車じゃなくてもよかったんじゃないですか?」
大学の通学時間は授業によって変わる。毎日規則正しく電車に乗る必要はなかったはずだ。
「その通学時間がルーティンだったってだけだ」
「そもそも大学って、三月は春休みですよね?」
とうとう彼が反論をやめて押し黙った。
哉明は講義もないのに、毎朝早い時間に同じ電車に乗っていてくれたわけだ。これが親切じゃなくてなんだというのか。
「……ありがとうございました」
あらためてお礼を言うと、ようやく観念したようで「ああ」と謝辞を受け取ってくれた。
「ところで、どこへ向かっているんですか?」
「俺の家」
「……は?」