執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
白物家電や電子精密機器、延いてはエネルギー産業まで幅広く扱っている大手企業である。

(まさか、あのLEOの経営者だって言うの!?)

美都は蒼白になる。キャリア警察官以前に、とんだ資産家ではないか。

「そんなこと、釣書にありませんでしたけど」

「俺の釣書に父親の経歴は必要ないだろ」

「それはそうですが……」

「俺の父親はLEOの取締役社長だ」

LEOの社長令息といえば、たいそうな肩書だ。

杏樹も知っていたなら教えてくれればいいのに、きっと美都が余計に委縮するからあえて黙っていたのだろう。

「本来なら俺が跡を継ぐべきなんだが、わがままを聞いてもらって警察官になった。だから結婚で父の役に立てるなら、と思っている」

「恩返しに結婚、ですか? お父様の用意した相手と?」

「そういうことになるな。それまでは結婚なんて考えていなかったから、そういう女性もいなくて都合がよかった。――ちょっと待ってろ」

先に車を降り、助手席の方へ回り込んでくる。ドアを開け美都の手を引き、車から降ろしてくれた。

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