執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「君のお祖父さんは負けなしの優秀な弁護士で、父もよく世話になっている。その孫にあたる君なら信頼できると踏んで、父はこの縁談を受けたそうだ。それに弁護士殿は各方面の権力者に顔が利くからな。繋がりは有益だ」

ふたりはマンションの地下エントランスをくぐり、高層エレベーターで上層階へ向かう。

ガラス張りのエレベーターから臨める景色が壮観だ。夜になればさぞ夜景が綺麗だろう。

「――で、俺自身についてはさっきも軽く話したが、品行方正なパートナーが欲しい。たとえば、妻に前科があれば結婚できないし、結婚後に罪を犯せば出世の道が絶たれる。その点、真面目そうな君なら安心と踏んだわけだ」

「出会ったばかりで真面目だとわかりますか? もしかしたら前科があって、結婚できないかもしれませんよ」

「そこは調査済みだし、人となりは聞いている。几帳面でずるいことができない、青信号が点滅し始めたらきちんと足を止めるタイプの人だって」

ぎょっとして哉明を見上げる。確かにその通りではあるのだが、そんな些細なエピソードまで知られているとは、少々恥ずかしい。

「いったい誰からそんな話を?」

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