執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
そんなことを考えながら靴を脱ぎ「おじゃまします」と玄関を上がる。

「身内が太鼓判を押したんだ。俺としては心強い」

「獅子峰さんは警察庁で働いているんですよね? 警視庁の方々とも面識があるんですか?」

「直接的な面識はないが、お願いすれば聞いてくれる間柄ではある」

(……それって権力をちらつかせて情報を聞き出したってことなんじゃ?)

警視庁と警察庁には明確な上下関係がある。

警視庁は『庁』といいながらも省庁ではない。東京都警察のことで、北海道警、京都府警などと並ぶ地方警察の一部にすぎない。

対して、それを管理する立場にあるのが警察庁だ。

東京は重要な犯罪事件を多く扱うから、ほか都道府県警と比べて少々特別ではあるようだけれど、基本的には警察庁の管理下にあると言っていい。

現に警視庁の重要ポスト、トップである警視総監はもちろん幹部には、警察庁の人間が就任する。

とくに哉明のようなキャリア警察官は、街中でよく見かける一般的な警察官とは比べものにならない権力を持っている。


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