執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「結婚だけが女性の幸せではないと思います」

美都は理論で責めるタイプだ。典型的な理系女子と言える。

「むしろこれからの時代は、個々の価値観に沿った理想的な生活を模索して――」

「でも、私はあなたのお父さんと結婚して、とても幸せになれたの。だから、きっと美都ちゃんも素敵な男性に巡り会えれば、とっても幸せになると思うわ」

対する杏樹は感情でごり押しするタイプ。

平行線だ。美都はそっと額に手を当てた。

(私がお義母さんみたいに綺麗でお淑やかならともかくとして)

愛嬌ゼロ、色気ゼロの美都が良家のご子息に気に入ってもらえるかは、はなはだ疑問である。

しかし、杏樹は自己肯定感に満ち溢れたポジティブ人間だから、美都の懸念は理解できないだろう。

「私はあまり男性に興味がないんです。毎日をつつがなく過ごすのが一番の幸せで――」

「もったいない! 美都ちゃんたらとってもかわいくていい子なのに、いい人に巡り会えないなんてもったいないわ!」

「かわいい、は無理があるのでは……」

控えめに言うと、杏樹はきらりと目を光らせた。

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