執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「こういうものは直感だ。嫌か、そうじゃないかの二択」

「どちらかというと嫌寄りです、不安という意味で」

人生の一大イベントを即決するなんて無理だ。

もちろん彼は美都のヒーローであって、憧れの男性。今後を考えても彼以上に素敵な人には巡り会えないだろう。

だが美都はもともと用心深い性格である。石橋は、叩いて叩いて叩きすぎるほどでちょうどいい。

「面と向かって女性に振られたのは初めてだな。ちょっと傷ついた」

哉明がどこか楽しそうに目を丸くする。どう見ても傷ついている顔ではない。

「あなたが嫌とか、そういう意味ではなく、婚約をジャッジできるだけの材料がありません。証拠不十分ってやつです!」

「うまいこと言うな」

職業を絡めた比喩に哉明はあははと声をあげて笑う。

なんだか楽観的な人だなあ、そう肩を落としかけたとき、哉明の目がきらめいた。

「だが手に入らないものほど欲しくなるのが世の常だよな」

突然彼の眼差しが鋭くなり、纏う空気が変わる。

「美都」

名前を呼ばれ、ドキンと鼓動が跳ね上がる。下の名前を呼ばれたのは初めてだ。

「な、なんです? あらたまって」

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