執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「他の女性を探すのは面倒だ。結婚してくれ」

「……その言い方でプロポーズを受ける女性がいるなら見てみたいです」

しかしあきらめるつもりはないようで、哉明は美都の右手をすくい上げると、手の甲にちゅっとキスを落とした。

手を握られるのも、体の一部にキスをされるのも初めてで、美都の頭は真っ白になる。

「つまり、君は俺の運命の相手だ。結婚してくれ」

「いやいや待ってください、どこをどう解釈したらそうなるんですか」

「結婚を考えていた俺の前に、条件をすべて兼ね備えた君があらわれた。もう運命と呼ぶしかないだろう」

そうなの?と一瞬丸め込まれそうになり、ハッと我に返った。

まさかこれは自供を迫られているのでは。強引な取り調べによる自白の強要――このまま起訴にもつれ込む気だ。

「黙秘します」

「プロポーズに黙秘権はない」

それは確かに……と納得する。

「せめて結婚を考えるにしても、もう少し距離を縮めてからにしてください。私だって獅子峰さんのことをよく知りません」

「じゃあ、キスしていいか?」

「はあ?」

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