執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
結婚ではなく婚約――即決する勇気はまだ持てないけれど、考える余地は大いにあると思う。

哉明がプッと吹き出して、美都のもとに戻ってくる。

「もちろん」

「では、私と婚約してください」

ソファの上に正座して、真っ直ぐに姿勢を伸ばし、ゆっくりと腰を折ると。

「綺麗な礼だな」

哉明は見蕩れるように漏らし、美都の隣に腰を下ろした。

ゆっくりと頭を持ちあげ、そこにある哉明の端正な顔を見つめる。

いつか自分はこの人と結婚を決断するのだろうか――それはまだわからないけれど、もっとよく彼を知りたいとは思う。

「よろしくお願いします、獅子峰さん」

「よろしく、美都」

すると突然、哉明の手が伸びてきて、美都の顎をすくい上げた。

すかさず距離を縮め、美都に唇を重ねる。

あまりにも突然の出来事に反応が遅れた。

これはどういうこと? なぜ? そんな疑問符に頭を支配されている間に、食むように唇を舐めとられた。

ちゅっと音を立てて唇が離れていく。呆然とする美都に、哉明は不敵な笑みを浮かべる。

「婚約は、許可と同義だよな?」

(そう……なの?)

< 56 / 257 >

この作品をシェア

pagetop