執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
婚約をするとキスはしていいことになるのだろうか。これからふたりの関係がどう変わっていくのか、美都には想像もつかない。

「って、放心か。もしかして、初めてだったか」

哉明が美都の目の前で手をパタパタ振る。

我に返ると、途端に顔が熱くなってきた。

柔らかな唇としっとりとした粘膜の感触が、まだ口の周りに残っている。

憧れの男性にファーストキスを奪われた。いや、もらったのだろうか? 少なくとも、今美都の心を占めているのは嫌悪感ではなくときめきだ。

恥ずかしくて、そしてどこか嬉しくて。戸惑いと喜びが混じったような、おかしな表情になる。感極まって、じんわりと視界が滲んだ。

「あー……そういう顔するか……参るな……」

哉明は気まずそうに目を逸らし、後頭部に手を当てる。

「なあ。もう一回、していいか?」

哉明が再びこちらに顔を寄せてきた。精悍な彼にしては珍しく、目は蕩けそうで、どこか色めいている。

初めて見る、甘くじゃれつくような顔。きゅううんっと胸が鳴って、息苦しくなった。

「だ、ダメ。ダメです」

「しよう。したい」

「圧しが強すぎる……!」

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