この結婚は運命ですか?~エリート警視正は清く正しい能面女子に首ったけ~
第三章 しなやかに、美しく
両家の顔合わせは、実際に同棲をしてみたあと、結婚を決断したときに――美都のたっての希望でそう決まった。

だが同棲をするのに美都の両親に挨拶をしないわけにはいかないと、翌週、哉明は美都の自宅を訪れ、両親に向かって丁寧に挨拶をした。

「娘さんを私にください」

深々と頭を下げ、お決まりの台詞を口にする哉明に、杏樹は涙目で舞い上がり、隼都は放心状態だ。

(紛らわしい言い方を……!)

こういうときはやたら人当たりのいい哉明である。誠実そうな人柄と、警察官という立派な職種に、両親は手放しで婚約に賛成した。

「あの、待ってください。まだ結婚を決めたわけじゃありませんから。一旦、婚約という形をとっただけで」

美都は必死になって説明するが、ふたりの耳には届かない。

「結婚も婚約も同じでしょう?」

「破談になる可能性があるのか?」

きょとんとするふたりに、哉明はキリッとした笑顔で答える。

「美都さんは照れているだけです」

両親の顔がふにゃりと緩む。

「照れているだけかあ」

「哉明さんは美都ちゃんをよくわかってくれているわあ」

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