執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「美都ちゃん。ちょっと来て」

美都の手を引きソファから立ち上がらせ、リビングを出る。

すぐ隣にある彼女の部屋に連れてこられたかと思えば、クローゼットを開け、扉の内側に貼られている大きな全身鏡の前に美都を立たせた。

「自分をよく見て、感じて。まるでモデルさんみたいに美しいでしょう?」

身長は一六六センチ。手脚が長く細身な体型がモデルっぽいと言えなくもない。

(胸がなくてひょろついているだけだと思うのだけど……)

ネガティブに言い換えればこうなる。美都は表情には出さないまま、自身のまな板を見てしゅんとした。

「それから、お父さん似の切れ長の目。面長で知的な顔立ち。とっても素敵だと思うわ。羨ましいくらい」

(私はお義母さんみたいに丸顔で目がくりっとしている方がかわいいと思う)

ないものねだりなので、どちらがよいとは言えないが、隣の芝生は青く見えるものだ。

「髪も黒くて艶々だし」

(呪いの日本人形って言われたことがあるわ)

「なにより、心が綺麗! とってもピュアでいい子だわ!」

(二十七歳でピュアって喜んでいいのかしら)

いちいち心の中で反論する美都である。

< 6 / 257 >

この作品をシェア

pagetop