執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
美都はあとに引けなくなったことにようやく気づき、早まったかもしれないと後悔した。
哉明が帰ったあと。娘の婚約が決まった安堵と寂しさから、いまだ魂が抜けている隼都をよそに、杏樹は美都を呼び出した。
「いい、美都ちゃん? 男心を掴むコツを伝授するから、よーく覚えていて。まずは家事についてだけど――」
語り始めた杏樹の言葉を、一応頭の片隅に置きながら、ひっそりとため息をつく。
(無理に気に入ってもらおうとは考えていないのだけれど……)
うまくいかなければそれはそれ、結婚しなければいいだけだ。
(……とはいえ、共同生活をするわけだし、礼儀を欠くのはよくない)
見知らぬ他人同士がともに暮らすのだ。我を通しすぎては破綻するのが目に見えている。
「……お義母さんは、お父さんに気を使っていますか?」
不意に尋ねると、杏樹は驚いた顔で言葉を止めた。
「そうやって好きな人に合わせて生活するのは、大変ではないですか? 毎日それだと疲れません?」
美都の純粋な質問に、やや間を置いて、杏樹は笑みを浮かべた。
哉明が帰ったあと。娘の婚約が決まった安堵と寂しさから、いまだ魂が抜けている隼都をよそに、杏樹は美都を呼び出した。
「いい、美都ちゃん? 男心を掴むコツを伝授するから、よーく覚えていて。まずは家事についてだけど――」
語り始めた杏樹の言葉を、一応頭の片隅に置きながら、ひっそりとため息をつく。
(無理に気に入ってもらおうとは考えていないのだけれど……)
うまくいかなければそれはそれ、結婚しなければいいだけだ。
(……とはいえ、共同生活をするわけだし、礼儀を欠くのはよくない)
見知らぬ他人同士がともに暮らすのだ。我を通しすぎては破綻するのが目に見えている。
「……お義母さんは、お父さんに気を使っていますか?」
不意に尋ねると、杏樹は驚いた顔で言葉を止めた。
「そうやって好きな人に合わせて生活するのは、大変ではないですか? 毎日それだと疲れません?」
美都の純粋な質問に、やや間を置いて、杏樹は笑みを浮かべた。