執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「合わせるとか、努力とか、大切な人のためなら気にならなくなるわ。その人のためになにかをしてあげられることが幸せなの」

「なる……ほど……?」

(ひっくり返せば、私が獅子峰さんのためになにかをして幸せを感じられたなら、大切な人だということね)

わかりやすい指標が得られて、美都は深く得心する。

「よくわかりました。ありがとうございます」

「大丈夫、美都ちゃんはしっかりしたいい子だもの。きっとたくさん愛される。自信を持って」

そう言って杏樹は美都の頭をいい子いい子する。この人の過保護もたいがいである。

(でも、父が選んだ人がお義母さんでよかった)

赤の他人と一緒に暮らし始め、やがて本物の家族になる。杏樹のおかげでその感覚が少しだけ理解できる。

(私もお義母さんのように……はちょっと無理だけど)

せめて自分なりに他人を大切にしてみようと思った。



一カ月後、美都は両親に笑顔で見送られ、哉明の家に引っ越した。

哉明の家は、玄関を入るとまず廊下があり、左に進むとリビング、右に進むと寝室、そして書斎がある。さらに奥の空き部屋を美都の自室に割り当てた。

< 61 / 257 >

この作品をシェア

pagetop