執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
実家の自室より広い。ベッドや鏡台を置いてもまだ余裕だ。ウォークインクローゼットがあるので、その分、収納家具を置く必要もない。

案内されたとき、哉明には「狭くて悪いな」と断られたが、とんでもない。美都は上等すぎると思った。



引っ越し当日の、日曜日の午後。荷解きを進めていた美都だが、ふと喉が渇きキッチンに向かった。

リビングに足を踏み入れ、ふうっと息をつく。立派すぎて何度見ても慣れない。

(獅子峰さんは……さっきまでここにいたと思ったのだけれど)

彼も今日は休日。交番勤務などと違って、デスクワークが中心である哉明は、土日祝日がお休みなのだそうだ。

ふとリビングを見回すと――いた。白い革のソファにごろんと寝転がり、仰向けになっている。

(お昼寝をされている……?)

片方の手を頭のうしろに置き枕にして、もう片方の手は携帯端末を持ったまま胸の上。

お昼寝というよりは、寝落ちといったポーズで、すやすや――というか凛々しく唇を引き結んでいる。

(寝顔までいい顔)

なんだかちょっと悔しくなる美都である。

(お疲れなのかな?)

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