執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
起こさないようにそっと、キッチンに向かおうとすると。

「腹でも減ったか?」

突然声をかけられ、びくりとして肩が跳ね上がった。

「起こしてしまってすみません、飲み物をいただこうと」

「いや。起きてた。考えごとをしていただけだ。起こされたくなかったら自室で寝るから、気にしなくていい」

立ち上がると、のんびりとした足取りでこちらに向かって歩いてきた。

動きはのんびりとしているが、足が長くて歩幅が大きいので、移動速度は速い。

「で? ため息の理由は?」

どうやら美都がリビングに足を踏み入れた瞬間に漏らしたため息までしっかり聞かれていたらしい。

「失礼しました。不満ではなく……その、何度見ても見事なリビングだなあと」

綺麗に片付きすぎていて、生活感がない。本当に、ここに人が暮らしているのだろうかと思ってしまうくらいだ。

「美しく見えるのは、収納が多くて整頓されているからでしょうか」

あとでどこになにが収納されているのか教えてもらわなければ。リモコンひとつ探すのに手間取ってしまいそうだ。

「収納もまあ多いが、単純に物が少ないんだ。日本に戻ってきたのが最近だからな」

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