執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
そういえば釣書に、二年の間、FBIに出向していたと書かれていた。戻ってきたのは今年の春――今から四カ月前だ。

「それで、なにを飲む? アイスなら冷蔵庫にいろいろ入っているから好きに飲んでくれ。ホットならコーヒーか紅茶か緑茶か。ひと通り棚に入っているはずだ」

そう言ってキッチンに回り、背面の黒い吊り戸に手をかける。シャーッという気持ちのいいレールの音とともにスライドし、収納棚が姿を現す。

床から天井まで全面備え付けの立派な収納棚で、上段は食器、中段にはポットやコーヒーメーカー、レンジやトースターが並んでいて、下段は引き出しだ。

上三段は美都の身長では届かない。

「あの辺の物は下に移動しないと、美都は取れないか」

上方の食器を見つめながら哉明が唸る。ふと美都の頭に哉明の手が乗っかった。

「美都はちっさいからな」

「お言葉ですが、身長は高い方ですよ」

「俺から見たら、の話だ」

ぽんぽんと美都の頭を叩いて遊んだあと、上段の食器を下段に移動した。

芸術作品の展示のようにぽつぽつとしか置かれていなかった食器が、きゅきゅっと集まり、生活感のある並びになる。

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