執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「で、飲み物だったな」

「あ、では、お茶にします。場所を教えてください」

哉明が奥の棚に案内してくれる。こちらも大変整理されており――というより、物が少なすぎて視認性が高いだけだが――高級そうな茶葉の缶と急須、ティーポットがいくつか並んでいた。

「このアールグレイの茶葉……」

「ああ。縁談のとき、お前にもらったやつだな」

「まだ封を開けてないんですね」

「美都が来たら飲もうと思ってた。開けてくれ」

では、と美都は缶を開封する。茶葉がふわりと香り、それだけで幸せな気分になった。

「……どうしたんだ? フリーズしてるぞ?」

「この瞬間が、非常に好きなんです」

「ん……茶葉の包を開ける瞬間が、か?」

「一番豊かな香りが味わえる瞬間ですよ。今のうちに獅子峰さんもどうぞ」

そう言って哉明の鼻先に缶を差し出す。哉明はすんすんと鼻を鳴らしながら「なるほどなー」と呑気に呟いた。

「次から、茶葉を開封するときは美都を呼ぶことにする」

「ぜひお願いします」

「それと、『哉明』な」

突然自己紹介を始めたので、美都は「知っています」と答える。

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