執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「そうじゃなくて。『哉明』と呼べ」

驚いてぱちりと目を瞬く。婚約したのだから当然か。

いつかは美都も『獅子峰美都』になるかもしれなから、獅子峰さんではややこしい。

哉明がティーポットを取り出して調理台に置く。美都は茶葉を入れようとして、ふと量に悩んだ。

「哉明……さんも、一緒に飲みますか?」

「ああ。もらう。もしかしたら、明日には味わえない香りかもしれないんだろ?」

「そうですね。ぜひ」

少し多めの茶葉を入れる。哉明は棚からモノトーンのマグカップをふたつ取り出した。

「黒がお好きなんですか?」

ちなみに、食器棚は全面黒、調理台の天板はホワイトベースの大理石で、床のタイルはグレーだ。

「そういうわけじゃないが。この家を買ったときに、家具や生活雑貨の発注をデザイナーに任せたらこうなった」

インテリアに合わせて、食器もモノトーンにしたようだ。

それにしても、哉明にはシックな黒がよく似合う。

「マイマグカップを持ってこなくて本当によかった……」

「何色だったんだ?」

「ピンクです」

「浮くな」

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