執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
決して自分に自信がないとか、容姿に引け目を感じているわけではない。冷静に分析するとこうなってしまうのである。

美都ははっきり言って自分の容姿などどうでもいい。

他人から愛されたいとも、かわいく見られたいとも思わない。

恋人のひとりでもできれば、容姿にこだわりが生まれたのかもしれないが、残念ながら二十七年間生きてきて、その機会は一度もなかった。

「ありがとうございます。でも私はあまり、縁談受けするタイプの人間ではないと思いますので」

杏樹の善意を否定もできず、ぼんやり濁すと、彼女は珍しく不安げな顔で美都を覗き込んできた。

「もしかして、すでにお付き合いをしている男性がいるの?」

「とんでもない」

これだけは迷いなく即答できる。

「じゃあ、意中の男性でも?」

おずおずと尋ねてくる杏樹を見て、ふと妙案が浮かんだ。

イエスと答えれば、この縁談の嵐が止むかもしれない。好きな男性などいないが、いると言ってしまうのも手だ。

しかし、妙なところで鋭い女性である、嘘だとバレないリアリティが必要だ。

< 7 / 257 >

この作品をシェア

pagetop