執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「『きゃー』とか『おいしい~♡』なんて言われたら、リアクションするこっちが疲れる。美都が普通にしていてくれるから、俺も気を抜いていられる」

そう言って紅茶をひと口。「確かにうまいな」と漏らして、再びマグを置いてソファにもたれた。

「それに、美都の表情はだいたい読めるようになった」

「え?」

「驚いたときは瞬きが増えるだろう。嬉しいときはプラスして目頭が少し持ち上がる。眉間に皺が寄っているときがあるが、不快というわけではなさそうだ。おそらく悩んでいるだけだな。よく不機嫌だと勘違いされないか?」

美都がパチパチと目を瞬く。まさに今、驚いているからだ。

自身はおろか、家族すら把握していなかっただろう、わずかな表情の変化を言い当てられた。

さすがは警察官、犯人を尋問するのに役立ちそうなスキルだ。

(って、私は犯人じゃないのだけれど)

戸惑う美都に、哉明がにやりと笑みを浮かべてたたみかける。

「美都。俺と結婚した方がいいぞ? お前の表情をここまで的確に読み取れるのは、この世で俺しかいない」

人の逃げ道を奪うのが好きなのは、警察官としての性なのか。あるいは生来の気質か。

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