執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「……検討材料に入れておきます」

目を閉じて紅茶を飲む。彼との共同生活は前途多難そう、そんな予感を覚えた。



夕方、近所のスーパーでふたり仲良く買い物をしたあと、夕食作り。

「なにが食べたいですか?」と聞いたら「ハンバーグ」と子どものようなことを言うので、美都は煮込みハンバーグを作った。

「本日は引っ越し初日で忙しかったので、少々手を抜かせてもらいました。あしからず」

美都がそう断って煮込みハンバーグとオニオンスープ、ご飯をダイニングテーブルに運ぶと、哉明は「どこがどう手抜きなんだ……?」と不思議そうな顔をした。

「この辺が」

「いや、すごい手が込んでるだろ。ハンバーグに、野菜までゴロゴロ入っていて」

ハンバーグの中には、にんじんやブロッコリー、じゃがいも、ナスなど、ごろごろした野菜が入っているが――。

「面倒でしたので、レンジで軽く蒸らした野菜をすべて突っ込んで煮込みました」

杏樹なら「野菜は素揚げに」と言うだろう。彼女は常識はないが料理の腕はあった。

ちなみに、美都もそこそこ料理が得意である。母を早くに亡くし、家事をこなしていたせいもある。

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