執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
そう断って、そそくさとリビングを出て自室に戻る。

ドアを閉めてひと呼吸。下半身を見ずに済んで助かった。

「というか、服を着てくださいと言うべきだったわ」

反省しながら再びアイロンをかけ始めると、ガチャっと部屋のドアが開いた。

「おい、美都」

半裸の男が部屋に踏み込んできたので、思わず悲鳴をあげそうになる。ぎりぎりのところでごくんと声を呑み込んだ。

「……なんです? 急に入ってきて」

ふと哉明の下半身を見て胸を撫で下ろす。ちゃんとボトムスを穿いてくれていてよかった……。

「あー、クリーニング、サブスク的なやつだから遠慮するなって言おうと思ったんだが」

「いえっ、自分で洗えますのでおかまいなく」

さっさと上裸の男に出ていってほしい一心で、再び手を動かす。

しかし哉明は、なぜかアイロン台の反対側にどっかりと腰を据え、あぐらをかいた。

「な、なんです?」

「いや、いちいちアイロンをかけるの、面倒じゃないかなと思って」

「大丈夫です。無心でアイロンをかけていると心が落ち着きますよ。心身ともに磨かれている感じがします」

「裸の男が目の前にいても、落ち着いていられるって?」
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