執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
見れば、にやりと笑う哉明。美都が動揺しているのを知っていて嫌がらせをしているのだ。
「はい。全然気になりませんっ」
「そうか」
哉明が適当な返事をする。なぜかどいてくれず、じっと美都を見つめたままだ。
「……まだなにか?」
出ていくか服を着るかしてください、そう思って睨みつけると、哉明がふっと吐息を漏らした。
「いや。綺麗だなと思って。そうやって、地道にコツコツ積み重ねる姿が」
「え?」
「料理を作って、アイロンかけて。お前、真面目に生きてるんだな」
それくらい普通ではないだろうか。首を傾げると、哉明は珍しく屈託のない笑みを浮かべた。
「俺はそういうの苦手だから。正しい姿勢で真っ直ぐに生きてるお前を見てると、綺麗だなと思う」
ドキン、と心が震えるのがわかった。そんな格好で、そんな顔で微笑みかけられたら、どう応えればいいのかわからない。
ぼうっとして思わず手が止まってしまっていた。
「焦げるぞ?」
「……っ!」
我に返り慌ててアイロンを動かす。
「さて、からかうのはこの辺にしておくか」
「か、からかってたんですか!」