執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「綺麗だと言ったのは本心だ。俺の婚約者が美しい人で嬉しいよ」

柔らかい笑みを浮かべたまま、すっと立ち上がる。

この人の方がよほど綺麗なのにと、美都は反射的に思った。ほどよく筋肉のついた上半身、髪が濡れて乱れていても、絵になってしまうほどの美丈夫。

「明日は仕事だろ。家事はそのくらいにして、早く寝ろ」

「わ、わかりましたっ、おやすみなさい」

「ひとりで眠れるか? 一緒に寝てやろうか」

「結構です!」

哉明はドアを開け、肩越しに振り向くと、今度は裏のある顔でにやりと笑う。

「寝室の鍵。開けとくからな。寂しくなったら来ていいぞ」

「行きません! おやすみなさい」

「おやすみ」

ドアが閉まり、今度こそふてぶてしい男が部屋を出ていった。

作業に集中しようとするけれどうわの空で、何度も同じ場所にアイロンを当ててしまう。

(急に褒めたりからかったり、なんなんだろう)

哉明の考えがわからない。……わかったことなど、これまで一度もなかったが。

(一応、気を使ってくれているのかな?)

美都がここで暮らしやすいように、わざととぼけた振りをしているのかもしれない。

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