執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
なぜそんなにじっとこちらを見つめてくるのだろう。見ていても楽しいものではないだろうに。

「あの。なにか?」

尋ねると、哉明は顎に手を添えて唸った。

「いや。しなやかで綺麗な体だなと思っただけだ」

はあ、と生返事する。

十五分間やりきってはみたが、集中どころではなく、やはり明日は自室でしようと心に決める。

ヨガマットを持って自室に向かおうとすると、入口に立っていた哉明にマットを取り上げられた。

「重いだろ」

「いえ。それほどでは」

「そこに置いとけ。明日もやるんだろ?」

「いえ。明日は自室でやりますので」

すると哉明はヨガマットを壁に立てかけ「なんでだよ」と不満げに漏らした。

美都の腰を抱き、そのまま顔を近づけてくる。

思わず「え、え?」と美都は腰を反った。

「おお。すごいな。イナバウアー。本当に体が柔らかいな」

「っていうかなんなんです、いきなり近づいてきて」

「おはようのキスでもしようと思ったんだが。そこまで嫌がるか」

「急にやめてください」

なんとか抵抗し、体をどかしてもらう。せっかくヨガで整えた心拍が、今のでめちゃめちゃになった。

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