執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
朝のアレを思い出し、思わず押し黙ってしまった。

鶴見が「え?」という顔をする。どうせ否定されると思っていたのだろう。だが、思っていたリアクションと違ったようで、あんぐりと口を開けた。

「……!! 信じられない! あの喜咲さんが行ってきますのチューを……」

思わず叫んだ鶴見に、奥に座っていた男性が反応する。

「なんだかホッとしたなあ。喜咲が無事に結婚できて」

彼は美都の直属の上司、筧孝之。四十歳の中堅社員だ。美都がこの庁舎にやってきて四年間、ずっと面倒を見てくれている恩師でもある。

「ですから。まだ結婚はしていません」

一応否定するも、ふたりは聞いていないらしく「よかったねえ」「羨ましい」と繰り返している。

「でも、大須賀さんが知ったらショックを受けちゃいそうだなあ」

筧が冗談交じりにぽつりと漏らす。鶴見が「確かに~」と揶揄するような目で美都を見つめた。

「……なんのことでしょう?」

「なんのって、喜咲さん本気ですかあ? 大須賀さん、あんなに頑張ってアピールしてるのに、本当に報われない……」

筧が横でうんうんと頷く。

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