執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「彼、一生懸命に仲良くなろうとしてるのに。喜咲ったら塩対応だからなあ」

「塩……。私、なにか失礼をしたでしょうか?」

「ほら、この前、食事に誘われてたじゃない? なのに、喜咲ったら俺と鶴見さんにまで声かけちゃうしさ。あれ、どう見てもふたりきりになりたかったんだと思うよ」

「本当ですよ。あのときの私と筧さんのいたたまれない感じ、わかります?」

美都は「はあ」と首を傾げた。

美都としては、警視庁の人間――いわば顧客と、上司抜きで食事に行くのはまずい気がしたのだ。だから筧を誘い、ついでに近くにいた鶴見にも声をかけた。

「もったいない。大須賀さん、格好いいし性格もいいし仕事だって安定してるし、どうして付き合わなかったんですか? 私だったら即OKしちゃうのに」

「そこが喜咲だよなあ」

口々にまくし立てられ、美都は困惑する。

「とにかく、大須賀さんの傷が浅いうちに『結婚しました』って報告した方がいいですよ~?」

「ですから、まだ結婚したわけでは」

「婚約はしたんだろ? 一緒だ一緒」

世間一般では結婚も婚約も同義なのだろうか。

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