執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
格好いい大人の男性。正義感に溢れた、身も心も強く気高い尊敬すべき人――美都は今でもそう思っている。

「お名前は? 年齢は知っている?」

本当は名前を知っていたが、特定されても困るので、曖昧な情報で濁そうと決める。

「名前は知りません。でも、帝東大学の三年生だと言っていました。痴漢を捕まえてくれたときに、駅員さんと話しているのを聞いたので」

「帝東大なんてすごいじゃない!」

杏樹が驚くのは無理もない。帝東大は日本で一、二を争う名門校なのだ。

「学部は聞いていないの?」

「はい……ただ、警察官を目指していると言っていました」

「まあ! 正義感が強くてぴったり。今頃、立派な警察官になっているんじゃないかしら」

杏樹が手を打ち合わせる。しかし、本当に警察官になっているかはわからないので、これはあてにならない情報だ。

「で、ほかには? 見た目の特徴とか、ないの?」

「ええと……背が高かったです」

背の高さも主観だ。中学三年生の女の子の視点なら、一七〇でも一八〇でも高いと感じるので、これもあてにならない。

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