執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
筧が不思議そうに尋ねてくる。

美都は話していないが、おそらく哉明が美都の素行について聞き取りをした際に、事情を説明したのだろう。

「私ではなく、婚約者が説明したのだと思います」

ふたりはまさかという顔をする。本庄主任と美都の婚約者に面識があることが衝撃だったのだ。

「喜咲の婚約者って、警視庁の職員だったの?」

「もしかして、この庁舎内で働いている方と……!?」

詰め寄ってくるふたり。美都は余計にややこしくなったと気づいて焦る。

「ええと……この庁舎内にはいませんが、警察官ではあります。警察庁に勤めているそうで」

警視庁ではなく警察庁――ふたりの脳裏に『キャリア』という単語がちらつき凍りつく。

「失礼ですが、どういった役職の方で?」

警察官は上下関係に非常に厳しいので、まず相手の役職を知ろうとする。くせのようなものだろう。

美都が「警視正と聞いています」と答えると、筧は額を押さえ、大須賀は深く俯いた。

ノンキャリアで警視正まで昇進できる人間は非常に少ない。いたとしても五、六十歳だ。美都と結婚するような歳で警視正といえば、間違いなくキャリアである。

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