執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
ちなみに大須賀はノンキャリアだ。役職は警視正には遠く及ばない。

「……そうでしたか。お相手が警察官なら安心ですね。どうぞお幸せに」

大須賀が乾いた笑みを浮かべる。

筧は早く立ち去った方がいいと判断したのか「それではお疲れ様ですー」と美都の背中を押し、そそくさとその場を立ち去った。

大須賀の姿が見えないのを確認して、筧は「はぁ~」と大きなため息をつく。

「喜咲、そういうことは早く教えて。地雷踏んじゃったじゃん」

「地雷……ですか?」

「いや、いい。忘れて。むしろ忘れてあげて」

げんなりとする筧とともに、美都は七階のオフィスに戻り、仕事を続けた。



その日の夜。哉明が帰宅したのは二十三時過ぎだった。

物音に気づき、美都は自室を出て玄関に向かう。

「哉明さん、おかえりなさい。お疲れ様です」

玄関を上がったところで真っ直ぐに立って、丁寧に腰を折る。主人の帰りを出迎える姿はまるで使用人、あるいは大正、昭和の古きよき嫁といったところか。

哉明も面食らったのか「あ、ああ。ただいま」と動揺気味に答えた。

「どうかしましたか?」

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