執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
靴を履き終えた哉明が美都に手を差しだす。その手を取りながら、カゴバッグと同じ素材のサンダルを履く。どこか気恥ずかしくて俯いた。

この胸がむずむずとする感覚はなんだろう。もしかして嬉しいのだろうか。自分は褒められると舞い上がる、以外と現金な人間だったのだろうか。

だがそれを哉明に悟られるのは悔しい。お世辞を言われるのはもっと嫌だ。

「次にからかったら、婚約破棄します」

「は? からかってない。本心だ」

「破棄します!」

「だから。本気だって。お前は綺麗だ」

わけがわからない言い争いをしながら、手を繋いでエレベーターに乗り込む。

美都の心はぐちゃぐちゃだ。褒められるたびに、熱が上がって頭がぼうっとしてくる。生まれて初めての感覚に、脳がオーバーヒートしていた。

(しかも、手を離してくれない……!)

しっかりと指先が絡められている。これじゃあまるで恋人同士みたいだ。

(ん? ……恋人、なの?)

婚約イコール恋人なのだろうか。だが、哉明も美都も恋などしていない。条件がいいから婚約しただけだ。

(もう、よくわからない)

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