執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
なに食わぬ顔で引き寄せられる。いったいどういうつもりで彼は美都を抱き寄せているのだろう。

「今日は食器を新調したい」

オーナーは美都をちらりと一瞥し、うやうやしく頭を下げる。

「承知いたしました。どうぞこちらに」

オーナーに付き添われ店の奥へ。その間も腰に手を回されたままだ。

美都は周囲には聞こえないよう「哉明さんっ……」と小さく反発する。

「俺たちの関係がわかりやすい方が、オーナーも商品を紹介しやすいだろう。いちいち新婚生活に向けてだとか、ペアの食器をくださいとか、口で説明されたかったか?」

「いや……それはそうなのかもしれませんが」

確かに百聞は一見に如かずとも言うが。それにしたって人前でイチャつくのはマナー違反だと美都は思う。

それに厳密には新婚生活ではないのだが――そう心の中でツッコミを入れつつも、いちいち口に出す気力も失せてゴクリと飲み込む。

案内された棚には洗練されたデザインの食器が並んでいた。

「ひと通りペアで揃えよう。美都、好きなデザインはあるか?」

尋ねられたが、なかなか悩ましい質問だ。センスに自信がない。

「哉明さんにお任せします」

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