転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
女のようなことを口走る俺に、眉をひそめるロイド。
「今さら何言ってるの? その身長で重くないわけないでしょ。嫌味?」
「いや、そんな……嫌味なんかじゃ」
しまった。ロイドは自分の身長が小さいことを気にしているんだった。――しどろもどろになる俺を、冷たく見据えるロイドの瞳。
「あっ、わかった。君、僕に背負われるのが今さら恥ずかしくなったんでしょ」
「……っ」
「僕、そういうの何て言うか知ってるよ。マリアが前に教えてくれた。確か……安いプライド、だったっけ」
「――ッ!」
全てを見透かすようなロイドの瞳に、俺はたじろいだ。
確かに、ロイドの言葉は正しかったからだ。
地上では俺とロイド意外、他に誰もいなかった。だからロイドに背負われることに抵抗を感じなかった。
けれど今は違う。この先に進めば、リリアーナが、セシルが、グレンがいる。
俺はその三人に自分の情けない姿を見られることを嫌だと思ったのだ。――リリアーナのことを一番に考えなければならないこの状況で、俺は一瞬でも、自分のプライドを守りたくなったのだ。
「図星? まぁ別に僕はどっちでもいいけど――でもそのプライド、今の君にとっては不要なんじゃないの?」
「…………」
(ああ、そうだよな)
本当にロイドの言う通りだ。反論の余地もない。
俺は拳を握りしめ、ちっぽけなプライドを振り払う。
そして今度こそ、ロイドの背中に体重を預けた。
「頼む、ロイド。一刻も早くリリアーナのところへ」
「言われなくても」
こうしてロイドは俺を背負い、闇に満ちた地下道を駆けだした。