転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
そうして気付いたときには、戦闘は既に終わっていた。
セシルに声をかけられた俺は、そのとき初めて、リリアーナが俺の腕の中で眠っていることに気が付いた。
――ああ、良かった……。
リリアーナのトラウマがなくなったわけではない。リリアーナを辛い目に合わせてしまったことにも変わりはない。
良かったと思うのは、俺のただの自己満足にすぎない。
それでも俺は、腕の中でいつもの寝息を立てているリリアーナの顔に、ほっとせずにはいられなかった。
――だが、緊張の糸が切れたからだろうか。
急激な眠気が、俺を襲う。
(何だ、これ……。――眠……)
そう思ったが最後、俺はその場で気を失ってしまったらしい。
らしいというのは、俺自身はその瞬間を覚えていないからだ。
結局、俺が目覚めたのは全てが終わった三日後のこと。
リリアーナとセシル、グレンが、マリアと共に北の国境へ旅立ってから、一時間後のことだった。